業務案内

社員(通報者)に対する研修・セミナー

目次

1. はじめに

 現在、大企業から中小企業に至るまで多くの企業が、通報者である社員のためのみならず、内部通報制度の自浄作用によりトラブルを未然に防ぎ、企業価値を高める結果につながることを期待しているところだと思います。

 しかし、内部通報制度が絵に描いた餅となってしまっては、当該効果は期待できません。企業内で問題が起きているときに、通報者が迷わず通報できる、そういった環境を作り、内部通報制度を実効性のあるものとすることができてはじめて、自浄作用が働くことになります。

 それでは、通報者が利用しやすい制度とするためにはどうしたらよいのでしょうか?

 多くの企業では通報者=社員という状況になっていると思いますので、まずは、社員に内部通報制度の存在を知ってもらい、当該制度の趣旨、利用方法を理解してもらうことが重要になります。

 当事務所では、その一つの方法として、内部通報制度の導入時に、社員向けに内部通報制度等に関するセミナーや研修を行うということをお勧めしています。

 そこで、本ページでは、当事務所で行うことが可能なセミナーの内容、その有効性などについて簡単にご説明していきます。

2. 内部通報制度の趣旨、効果

 まずは、内部通報制度の趣旨、仕組みなどを、研修にて理解してもらうことが必要と考えます。

 「内部通報制度」を導入する企業は増えてきていますが、「内部通報制度」を理解している社員はまだまだ少ないのが現状ではないでしょうか。仮に名称は聞いたことがあるとしても、どういった制度で、会社はどうしてこのような制度を設けることになったのか、通報するとどういったことが起こるのかを理解をしている人はほとんどいないと思います。

 加えて、社員にとって通報は決して楽しい作業ではありません。それをしてもらうためには、通報に意義があるといことを理解してもらうことが大変重要になります。

 そこで、まずは、内部通報制度の趣旨、仕組み、さらには通報した場合の流れなどを説明し、理解してもらうことが研修の重要な役割と考えます。

 特に、通報することで、どういった効果があるのかということは、通報のモチベーションにつながる重要な点ではないでしょうか。

 具体的には、ご自身の職場環境の改善につながるのみならず、働きやすい職場作りにつながり良い人材が集まったり、企業のトラブルを未然に防いだりすることで企業価値も上がり、最終的には社員の利益にもなる、そういった効果や仕組みを理解してもらうことが、通報への障壁を低くし、利用頻度を上げることにもつながると思います。

3. 通報対象事実

 通報対象事実について、具体例を交えながら説明をすることも重要と考えます。

 まずは、通報者である社員が、通報すべき事実がどういった事実なのか理解できていませんと、当然通報につながりません。

 現在、すでに内部通報規程が存在している場合には、一度ご覧いただきたいのですが、通報対象事実については通常は、抽象的に定められています。

 社員が企業のお金を横領している、セクハラやパワハラを受けているなど、該当するということが非常にわかりやすい問題もありますが、他方で、事実は認識しているが、まさか通報するべき状況とは考えなかったということも十分に起こり得ます。

 ですので、研修において、具体的事例を用いて、こんな場合も通報を検討してほしいという形で、説明をすることが重要になると考えています。

4. 会社側の対応

 通報者に対して、通報によるペナルティ等の不利益が課されることはないということを説明することも重要です。

 通報を受けた経験から申し上げると、通報者が常に心配しているのは、通報したことで、理不尽な異動を強いられるなど会社から不利益な扱いを受けないかということです。

 どの会社の規程にも、通常、通報によって不利益を受けることはないという記載があります。しかし、それを知っている通報者でも不安になるのが通常です。

 当事務所では、内部通報の外部窓口業務をお受けする際、必ず、通報者に事実上のペナルティを課したりすることは絶対にやめてほしい、そういったことをすると社員の内部通報制度、ひいては会社に対する信用がなくなり、せっかく制度を構築しても意味がなくなってしまうという説明をします。

 これについて理解できない担当者の方はいらっしゃらず、会社ももちろん理解してくれています。それでも、通報者の方は不安をぬぐい切れないまま連絡をしてこられるという状況です。

 当事務所では、通報を受けた際に、通報者の方が不安を口にされた場合には、もちろん丁寧に、不利益を受けることはないこと、それは、当事務所から会社側にもお願いしていることをご説明し理解いただきます。多くの通報者は、それにより一定の安心を得てお話しくださいます。

 そのため、不安を抱えながらも通報をしてきてくださる方については、不安を解消する機会があります。

 しかし、このような現状に鑑みれば、結局、不利益を被ることに不安を感じて、通報自体を辞めている方も非常に多いと思われます。通報自体をしていただけない場合は不安を解消する機会もありません。

 会社から不利益を被ることを恐れて、通報をやめてしまう方を出さないためには、やはり、通報者となりうる社員に向けてあらかじめ研修を行い、通報によるペナルティ等の不利益が課されることはないということを、会社からのメッセージとしてしっかりと伝えておくべきと考えます。

5. セミナー担当者の検討

 では、セミナー担当者はどう選ぶべきでしょうか。

 一つの選択肢にはなりますが、当事務所としては、内容を考慮すると、法律の専門家である弁護士1名と会社としてのメッセージを発信できる会社内部の人1名程度で、セミナーを実施できると良いのではないかと思っています。

 弁護士ですが、可能であれば、内部通報の社外窓口となっている法律事務所の弁護士が行うのがベストと考えます。まずは内部通報制度の趣旨、効果、内部通報対象事実などは、関連法規の知識とも密接に関係するものですので、法律の専門家であることが重要です。加えて、内部通報の社外窓口となっている法律事務所の弁護士であれば、社員に対して、どういう弁護士が通報に対応してくれるのかという紹介を兼ねることできるので、弁護士の周知にもなります。そのため、社外窓口を担当する弁護士によるセミナーができれば一石二鳥です。

 また、セミナーに会社からのメッセージを発信できる方が関わることも重要と考えます。どんなに、弁護士から内部通報制度の趣旨や効果を説明しても、また通報により通報者が不利益を被ることはないと説明したとしても、最後は結局会社の判断になるのは明らかです。その会社から、会社としても内部通報制度を重要なシステムと考えていることや、そのため通報により不利益を与えることはないので、積極的に利用してほしいというメッセージが発信されるか否かでは、社員の安心感に大きな差が出ます。その意味では、セミナーに参加自体は難しい場合でも、例えば、セミナーの最後に、会社の代表者からのメッセージを動画で流すというのも一つの良い方法と言えます。

6. まとめ

 ご説明してきたように、社員向けのセミナーは、内容を工夫することにより、社員のためのみならず、社員に内部通報制度の存在を知ってもらい、利用を奨励することに役立つものです。会社にとっても大きな利益が見込めると言えます。

 当事務所では、会社のご希望に合わせて、セミナーの内容、セミナー担当者の人選などについてご相談にのらせていただきます。
 一度ご相談ください。