コラム

公益通報者保護法

公益通報者保護法について⑨~役員の不利益取扱いの禁止について~

弁護士 小島梓

 「公益通報者保護法について⑧~労働者の不利益取扱いの禁止について~」のコラムにおいて、公益通報者が労働者や派遣労働者であった場合の不利益取扱い禁止の内容と効果をご説明しました。
 今回は、公益通報者が役員であった場合の不利益取扱い禁止の内容等について見ていきたいと思います。

(1)公益通報者が役員の場合
ア 報酬の減額、その他不利益な取り扱いの禁止
 役員が公益通報したことを理由として、当該役員の報酬を減額したり、その他不利益な取り扱いをすることは禁止されています(公益通報者保護法5条3項)。実際に報酬が減額されてしまった場合は、原状回復の措置が求められると考えられます。

イ 解任について
 では、役員が公益通報を理由として解任されてしまった場合はどうなるのでしょうか?
 解任自体は禁止されていません。しかし、公益通報を理由として解任された場合、当該役員は解任によって生じた損害の賠償を会社に対して請求できるとされています(公益通報者保護法6条1項柱書)

(2)会社からの損害賠償請求禁止
 不利益取扱い禁止の関連で、平成2年6月改正法によって大きく変わったのは、会社が、公益通報によって損害を受けたことを理由として公益通報者に対して損害賠償請求することは禁止とされたことです(公益通報者保護法7条)。

 公益通報されたことによって損害が発生したとして賠償請求を行うことは、公益通報者に対する不利益取扱いと言えなくもない措置ですが、当該条文がない場合、法的手続きであるゆえに不当なものではないという弁解が通る可能性もあり、公益通報者が通報を控える要素になりかねないところでした。

 このように、令和2年6月改正法では、公益通報者の不利益取扱い禁止について規定が増えていますので、会社としては、公益通報者に対する措置に関して十分な確認、配慮が必要となります。

 次回は、令和2年6月改正法により新たに設けられるに至った、公益通報者保護法違反に対する刑事罰等について見ていきたいと思います。