コラム

公益通報者保護法

公益通報者保護法について⑩~公益通報者保護法違反に対する罰則~

弁護士 小島梓

 令和2年6月改正法における大きな改正ポイントの一つは、公益通報者保護法にたいする罰則が設けられた点です。従前より、公益通報者保護法の中で会社において禁止されている事項は定められていましたが、当該規定に違反したとしても特にペナルティがなかったため、実効性に欠けるとことがありました。今般の改正により罰則が設けられることとなりましたので、会社側からするとより慎重な対応を求められることになります。
 今回は、罰則について簡単に見ていきたいと思います。

(1)守秘義務違反

ア 守秘義務
 令和2年6月改正法により、新たに公益通報対応業務従事者(もしくは過去に従事していた者)について守秘義務が定められました。当該従事者は、正当な理由なく、その公益通報対応業務に関して知りえた事項で、且つ公益通報者を特定させる情報を漏らしてはならないとされています(公益通報者保護法12条)

イ 刑事罰
 上記守秘義務違反が認められた場合、当該情報を漏らした対応者に対して30万円以下の罰金が科されることになっています(公益通報者保護法21条)

(2)公益通報窓口設置義務違反

ア 公益通報窓口設置義務
 従業員数が300名を超える企業は、公益通報窓口を設置する義務があることが課令和2年6月改正法により定められました(公益通報者保護法11条)(詳細は「公益通報者保護法について②~公益通報窓口設置義務~」をご覧ください)。

イ 罰則
(ア)行政処分等
 上記義務違反が発覚した場合、以下の処置がとられる可能性があります。
■内閣総理大臣から事業者に対して報告を求められる、助言、指導若しくは勧告がなされる(公益通報者保護法15条)。
■内閣総理大臣からの勧告に従わなかった場合、会社名が公表される可能性がある(公益通報者保護法16条)
(イ)行政罰
 上記の内閣総理大臣からの求めに対して報告をしなかったり、虚偽の内容を報告した場合には、20万円以下の過料に処せられる可能性があります(公益通報者保護法22条)

 会社として、行政指導をうけたり、義務違反があった会社として公表されるだけでもかなりのダメージがあるはずです。
 当該事態になることを防ぐためには、公益通報者保護法そのものに加え、公益通報者保護法に基づく指針も理解して、適切な対応を心掛ける必要があります。

 次回からは、指針の内容について見ていきたいと思います。