コラム

公益通報者保護法

公益通報者保護法について⑤~公益通報対象事実~

弁護士 小島梓

公益通報者保護法について④~公益通報者とは~」のコラムの中で、「公益通報」の内容についてご説明しました。「公益通報」に該当すると言えるためには、「その労務提供先である会社、又は会社の事業に従事する役員、従業員等について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を」通報する必要があります。
 今回はこの「通報対象事実」とは具体的にどういったことを指すのかということにフォーカスしたいと思います。

 通報対象事実については、公益通報者保護法2条3項に定められていますが、こちらも令和2年6月改正法により若干範囲が広がりました。概要は以下のとおりです。

①公益通報者保護法に規定する犯罪行為や行政罰対象となる事実
②公益通報者保護法別表に掲げる法律に規定する犯罪行為や行政罰対象となる事実
<別表に記載された法律の例>刑法、食品衛生法、金融商品取引法、個人情報の保護に関する法律など
③別表に掲げる法律への違反が、最終的に刑罰や行政罰につながる事実

 令和2年6月改正法により、加えられた事項の一つが①です。
 そもそも、令和2年6月改正法以前は、公益通報者保護法自体に刑事罰等が定められていませんでした。それが今般の改正により、公益通報者保護法違反につき、刑事罰や行政罰が規定されるに至りました。(新たに規定されるに至った刑事罰や行政罰については別コラムにて紹介予定です)

 そして、当該刑事罰や行政罰の対象となる事実も「通報対象事実」に加えられました。そのため、今後は、会社が公益通報者保護法にて課されている義務を果たしていない、すなわち内部通報制度に不備があると言った内容についても通報がなされる可能性が出てくるということです。
 会社としては、内部通報制度の構築、見直しについて、より一層慎重な対応が求められるようになります。基本的には、専門家への相談や内部規定のリーガルチェックをしてもらうことをお勧めします。会社に顧問弁護士がいる場合には、一度、顧問弁護士に相談してみるのも良い方法です。