コラム

公益通報者保護法

公益通報者保護法について④~公益通報者とは~

弁護士 小島梓

 「公益通報者保護法③~公益通報者保護法の制度趣旨など~」にてご説明しましたように、公益通報として保護されるためには条件があります。その一つが、公益通報者保護法に定められている「公益通報者」に該当することです。この点、令和2年6月改正法により、追加修正がなされ、範囲が拡大していますのでご注意ください。
 今回は、この公益通報者について簡単にご説明していきます。

(1)「公益通報者」とは
 改正前まで、「公益通報者」として保護されるのは、基本的に現役の「労働者」のみで、したが、令和2年6月改正法により、「公益通報者」には、以下の者が含まれることになりました。

①労働者(正社員、アルバイト、パートタイマーなど。退職から1年以内の者を含む。)
②派遣労働者(退職から一年以内の者を含む。)
③委託事業に従事する委託先の労働者や派遣労働者(退職から一年以内の者を含む。)
④役員(取締役、監査役など)
⑤委託事業に従事する委託先の役員

 退職した者や役員が「公益通報者」に含まれるとされた点が大きな改正点と言えます。

(2)「公益通報」とは
 では「公益通報」とは、どういったことを指すのでしょうか。
 「公益通報」とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく、その労務提供先である会社、又は会社の事業に従事する役員、従業員等について通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしている旨を、当該会社や会社の定めた社外窓口、行政機関、若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(被害者やマスコミなど)に通報することであると定められています(令和2年6月改正法2条1項柱書)。

 以上より、公益通報者として保護されるのは、(1)の通報者が、(2)の公益通報に該当する内容を通報した場合ということになります。

 社内で内部通報制度、規程を設ける際には、最低限、この公益通報者として保護される人たちは、「内部通報者」に含まれるようにしていただくのが望ましいと思います。(公益通報窓口設置義務を負っている会社については、必ず含まれるよう制度設計していただく必要があります)

 さらに、公益通報者に該当しない人たちを内部通報者に含めること自体も禁止されるものではありません。内部通報ガイドラインでは、対象を広げることが推奨されているところでもあります。しかし、範囲を広げすぎることによるデメリットやリスクもあります。慎重にご判断いただければと思います。